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『酒のさかな』高橋みどり 牧野伊三夫挿画 メディアファクトリー、2007年(ちくま文庫もあり)
(表紙画像は出版社サイトよりお借りしました)

お気に入りの料理本、持っているだけで幸せですよね。
呑んべえで有名な? フードスタイリストとして知られる高橋みどりさんのこの美しい本が大好きです。

むかーし渋谷の、繁華街からずいぶん離れた場所に、かっこいい立ち飲み屋さんが身を隠すようにありました。昭和30年代の邦画のセットみたいで、地味の極致だけど木の板目までビシッと清潔で、つまみが塩に至るまで「うーむ。」と唸るくらい旨くて、お客さんは寡黙な渋いおじさん一人客ばかり。私も冷やでキューっといける大人になりたい。。。スーツではなく、背広の似合うおじさんに生まれたかった・・・と憧れる、キリッとした飲み屋でした。

いつかお酒(特に日本酒)が飲めるようになる、と思っていたけど、訓練虚しく結局下戸のままでしたが、美味しいお酒は飲めないけど、つまみなら食べられるよ! 作ってみたくなるよ!(お料理の中でも、奥が深いとは思いますがとっつきやすい気がするのです)

この本は、ちょっとその飲み屋さんを思い出します。
今は姿を変えてしまったけど、この当時に料理屋「にぼし」を出していた、お酒に合う船田キミヱさんのレシピがおさめられています。

船田さんは高橋さんの「お酒の師匠」。
その手になる酒のさかなは「右に出るものがいない」という美味しさだそうなのです。
帯には

 酒のみごころをくすぐる肴(さかな)のかずかず。
 出すぎることのない、絶妙な味と量。
 ずっと本にしたかったお酒の師匠、
 船田キミヱさんの味。

とあります。
だいたい、「にぼし」という名前がかっこよすぎて、味への期待がいやがおうにも高まります。

内容は、「はる」「なつ」「あき」「ふゆ」「お酒のしめに」で主に構成され、コラムと
ささやかだけどていねいに「船田流味つけの素」「船田流 おいしくするため」と、基本とコツもついています。

今の時期なら、秋と冬のおいしいとこどりですね。

めざしごま衣揚げ 芝海老塩ソテー 刺身こんにゃくとたこの酢味噌あえ  じゃこチーズせんべい アンチョビバター 銀杏焼き 
           (などなど。「あき」より)

白菜と春菊のとろろ昆布煮 鶏むね肉の治部煮 帆立貝の鹿の子焼き
ねぎチャーシューからしじょうゆ つくね ぶり大根 サーモンの塩漬け 生牡蠣レモンペッパー
          (などなどなど、「ふゆ」より)

けしてお酒を邪魔しない、「だから味つけは、こすぎることなく、素材のおいしさを十分にひきだすほどにとどめて、ひと皿の量はひかえめに、けれど思わずそそられるようなそそとしたもりつけが好ましい」と高橋さんによるまえがきにあるように、何気ないひと品が並んでいるのですが、

ためしに作ってみると、どれもこれも深い味わいで、作る量によってはもちろん、りっぱな晩御飯のおかずになります。
春は苦味ばしったわくわくさ、夏はまた爽やかで、どれもいいんだなあ!

牧野さんによる画と、ちょっとしたコツの解説も清楚ですてきです。
メディアファクトリー版は、地味なカバーをめくると、目に青葉な美しい緑のイラストが出てくるのがお楽しみです。
上品でかっこいいお料理写真といえば! の日置武晴さんの写真もおさめられていて、やっぱりしみじみ好きだなあ。

とても渋い、高橋さんそのままの雰囲気でかっこいいこの本は、思い入れがあってずっと手元にあると思います。
お酒が好きな人(と自分)に作って、「美味しい!」と喜ばれたい気持ちになる一冊です。

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