9784860294465
『くよくよマネジメント』津村記久子 イラスト森下えみこ 清流出版、2016年
(表紙写真は出版社サイトよりお借りしました)

無理にポジティブに考えようとしないで、こたつでいっしょにくよくよしませんか?
という感じのぬくぬく本が、津村記久子さんの手によって出ていました。

津村さんといえば私のアイドル。でももし「好きです!」と詰め寄ったりしたら(以下妄想です)、

    「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

    「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」←ふとんにもぐっていく音

と夜行性の生き物に呼びかけた結果みたいになるに決まっているので、愛はそっと思うだけにしておこうと思います。

例えがあんまり良くなかったですが、たとえばそんな時、津村さんに代表される「くよくよ族」はすみっこでふとんにくるまって何を考えているのだろうか? 
「さばさば族」でない私も、年季の入ったくよくよ一派だと思うのですが、自分と似ているところがあるだろうか。

「気にしない」「聞き流す」「理由を考えない」方法がわからない〜、というところまで気になってじたばたする出口は、どこに見つければいいのだろうか。
そしてくよくよは「マネジメント」できるものだったのか! という気持ちで本書を読みました。

冒頭で著者は、良しとされがちな「さばさば派」が、えてして何でも(人を傷つけかねないことでも口に出して)言ってしまうことなどを例に引き、口に出すべきか考えるくよくよ派を擁護しています。(ここでは無邪気な発言ではなく、よく著者が語るように、モラハラ・パワハラ的な意味合いも含まれていると思います)

もし人を傷つける放言をしておいて、「私さばさばしてるから(良いのだ)」と開き直られたらそれはたまらないですよね。自称さばさば公害です。でも傷つけられたとしても、心優しきくよくよ派は打ちひしがれることはないのです。

 心が自由であることが最も重要だと思います。体でたとえると、よけいな宣言や、外面的な、人に言うための美徳という脂肪に縛られていないことです。そうやってできるだけ心を軽くし、吹き付けられる毒をかわし、体のうちから湧き上がる毒を排出することであるように思います。
 そういうわけで、くよくよ族のわたしなのですが、いろいろ考えたあげく、くよくよにもさばさばにも貴賤はないと思うようになりました。これからも、思う存分思い悩む所存であります。
             (「くよくよしてもいい」より)

こんな文章から始まる、心ゆくまでのびのびとくよくよする本ですので、仕事上での「どん底からの回復過程」、などというページはありますが、明快に「こうすればくよくよしなくなる!!」式のマニュアル本ではありません。随所に、そうだよなあ。。。と感心する言葉が散在しています。「明日の自分を接待する」という言葉なんて、いいですね。

 だからこそ、体力や精神力のやりくりということをいつも考えていて、その一環として、くよくよしていてもいい、無理にさばさばする必要はない、というわけなのですが(後略)
     (「「くよくよ」の先には」より)

 (人との会話において)特に、傷つきすぎないことは大事です。要するに、神経質になりすぎない、というか、心に貼り付いた誰かの言葉に心を傾けすぎず、自分がその言葉にとらわれているのは、本能的にネガティブなことに注意を払おうとする脳の作用だ(愛読している「ライフハッカー日本版」によると、バックファイア効果というそうです)、と考えるようにすると、心の負担が少し減少するようになります。
     (「会話による心の負担を減らす」より)

文具や紙に関わる仕事が多かった著者ならではの、ノートなど文具の話や、心配や不安があまりにも多かったある時期から始めたという「手書きツイッター」(誰にも見せない前提)が新鮮でした。

それは昔からある日記じゃないか、と思うかもしれませんが、手書きや「思いついたら1日何度でも」メモしていく思考や感情の推移が、(「不安に襲われることがあっても、そのうちどうでもよくなる」ということがわかり)不安を乗り越えていく上で役に立ったという話でした。(「手書きによる心の保存方法」より)

読みながら、これはかなり仕事と人間関係に疲れた人の発想と苦肉の策だなぁ、と思うことが多かったのですが、あとがきを読むとやはり、大変だった時期の連載だったようです。
内向き・後ろ向きの時期は誰にでもありますよね。そうした「すべてだめな時は、せめて休息を」とり、「一人で乗り越えること、誰かに救われること」(ともに目次より)をめざしたいと思うのです。

森下えみこさんのゆるやかなイラストと4コマも、とても可愛いです! お風呂につかっているようなほっこり感でした。

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