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『となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代』内藤正典 ミシマ社、2016年
(表紙画像は出版社サイトよりお借りしました)

暴力の連鎖と悲惨を断ち切るためには、イスラム教徒を理解して共生すべきだ、という趣旨の本書を読んで、書かれていることは非常に胸が痛むことばかりなのですが、読んでいてホッとする自分がいました。

なるべく私もイスラムを理解したいと思っているのですが、近年は理解より恐怖の方が先立っていたうえ、わかりやすく解説されたイスラムに関する本に出会えていなかったからです。恐怖は知識や視野を極端に狭めますが、そうした恐怖がなだめられていくのがわかりました。

ずいぶん前のことですが、知人がお世話になった方が、突然「イスラム(とアラー)の名のもとに」国内で暗殺されました。縁がないと思っていたイスラムが自分の中の疑問と恐怖として根付いたのはこの時からでしたが、その後アフガニスタンのマスード将軍(ノーベル平和賞の候補にもなった人物で、女子教育に力を注いでいました)のことを知り、やはり多民族の共生とテロ撲滅を訴える姿などに、イスラム教を理解したいという思いも芽生えました。

最近は、初めて日本人イスラム教徒の友人もできました。わからないことがあれば本人に聞けばいいのですが、知らないまま気持ちを傷つけたりするのを防ぐためと、やはり特に2001年以来の重苦しい気持ちを楽にしたくて本書を読みました。イスラムという観点から、非イスラム教徒が大半の日本人の私にも、今の状況がわかるような本です。

読み出して痛感したのが、自分がいかに西洋文化寄りの見方をしていたか、でした。アジア人として、イスラム教徒寄りのつもりだったのに、これはけっこうショックでした。いかに「となりの、ふつうのイスラム」を知る情報が少ないか、少ないまま今の日本にもはびこる「移民・外国人排斥」の風潮に染まってしまうことが、いかに危険か、排斥がテロを生むという構造が他人事ではないのだ、という現実を進行させることに自分も加担しかねないからです。

社会学者・研究者である著者は、30年にわたってトルコなどから、ヨーロッパへ移民するイスラム教徒のリアルを目の当たりにしてきた方です。衝突や戦争、内戦やテロの原因と経緯はたいへん複雑ですが、著者はそれをわかりやすく説明し、これから日本でも確実にイスラム教徒は増えていくだろうし、イスラムとの相容れない違いに着目し「戦う」より、「共存を図る」ほうがはるかに大きな恩恵が生まれることを説きます。

  イスラムの場合、さきほども触れましたが、根本的に私たち、あるいは近代以降の西欧世界で生まれた価値観とは相入れないところがあります。そこばかりに注目するなら、イスラム世界と西欧世界は、対立し、衝突し、暴力の応酬におちいってしまいます。それをどうしたら避けられるか、ここのところも考えなくてはなりません。イスラム世界と西欧世界とが、水と油であることを前提として、しかし、そのうえで、暴力によって人の命をこれ以上奪うことを互いにやめる。そのために、どのような知恵が必要なのかを考えなければなりません。
 そういう願いを本書に込めました。
               (「まえがき」より)

本文はたいへんわかりやすく、次から次へと目からウロコが落ち、本に貼ったふせんはまたほぼ全ページになってしまいました。
ここに私の驚いた事実、胸を痛めた現実、を列挙したいのですがとてもスペースが足りず、またまとめる知識・筆力がなくてすみません。

全体を通じた私のイスラムに対するイメージはかなり変わりました。
もちろんテロは論外ですが、そうせざるを得ないほど追い込まれてきた状況、アフガニスタンにも感じた西洋の大国の論理の非道さ、間違った「イスラム世界」認識による悲劇の連鎖、「国家」という枠組みの問題点などを本書によって知り、、、好むと好まざると「西洋」に連なり、とばっちりを受け入れるしかない日本には、もしかしたら「共生することができない」と思い込んでいる西洋とは違い、新しい「理解と共生の道」を示すことが間に合うのかもしれません。私の知る限り、外国人イスラム教徒の人に、日本を悪く言う方はいません。むしろ目をキラキラさせて、憧れを語るのです。その寄せてくれるまっすぐな気持ちを思い出しました。

うまく本書の良さを説明できないままでした。この本は買って、熟読したいと思います。
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