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『写真家の流儀 巨匠の撮影流儀に写真を学べ』(エイムック)枻(えい)出版社、2016年
(表紙写真は出版社サイトよりお借りしました)

見る専門ですが、写真が好きです。自分で暗室で焼いたこともないし、技法も、アナログとデジタルの見分けもつかないかもしれないのだけど、とても惹かれる媒体です。
なぜかわからないけど、特にモノクロの作品は見ていると温度や感触を感じることができたり、鳥肌が立ったりします。映像とはまた違う不思議。

表紙には「巨匠の撮影流儀に写真を学べ」「秘技を大公開」とあります。アーティストはほとんどそうかもしれないけど、「言葉で表せない(表さない)から」写真を撮っているのだろう写真家たちにインタビューして、スタイルや秘技まで聞きだすのは、とても理解と根気のいる仕事だと思います。私なら「そうですよね。聞くだけ野暮で、そもそも見ろってことですよね」としっぽ巻いて帰って来ちゃうと思います。

それでも、どうしていつも私はこの人の写真の前で立ち止まってしまうのだろう(なにが他の人の写真とちがうのだろう)、写真家が被写体(人間でなくても)と一瞬にして作っているといえる空気感は、どんな意識のもとに生まれるのだろう(なにを見ているのだろう)、
この心をざわつかせるザラザラ感、もしくはしっとり感はどんな工程で出来上がるのだろう。機械を通してなぜ体温が伝わるのだろう、自分の好みの写真はどんな写真なんだろう? と知りたいことはどんどん出てきます。

私がスナップ写真をとる時は、「撮る」なんてものじゃなく「押忍!」という感じで目をつぶって適当に押しているようなものです。だって画面がよく見えないし。瞬時に光を察知しフレームを選択し、いろんなやり方(←わかってない)で撮りながら、地に足つけてるなんて、写真を撮れる人はすごいのだ。。。(何度も言うけど、テレビの秘境探検番組でなにがすごいって、重装備のカメラマンさんが一番すごいと思うのです。足元をいつも心配しています)

そんな技法と縁遠い私も、もちろん写真を学ぶ方も、プロのカメラマンさんも読んで「ほほー。。。」となる表現が並んでいるのが本書です。言葉で表せないものを撮っている・・・・・・という方ばかりではないでしょうが、36人の写真家の技法や意識、何を大事にしているかについて、雄弁に聞こえる素晴らしい言葉が並んでいます。やっぱり言葉の表現力もすごいのかな。

『レンズの奥に希望が写りますよ、と言うと相手の眼の力がぐっと強くなる』という”ハービー語録”を持つハービー・山口氏の写真が私はやっぱりとっても好きなのですが、
被写体に対して第一に「敬意と好意を持」ち、シャッターを切る瞬間に「いかに仲間になれるか」という言葉も素晴らしいと思いました。

「光」について語っているセイケトミオ氏が、藤沢周平の時代小説の文章にも「読んでいると、光の景色が具体的に浮かび上がるような表現が随所にあるのです」という話がちょっと意外で興味深かったりします。氏によれば、今の多くのカメラマンは少し光に雑すぎ、ポラとストロボが写真家を駄目にしてしまったと感じているとのことでした。セイケさんの繊細な繊細な、セピアがかったグレイッシュな柔らかな光のグラデーションを見ると、体の無駄な力が抜けていくような、美味しそうな、身体に直接作用する力があって大好きなのですが、たくさんの要素の中の基本の光という観点が示されて、納得するものがありました。

美意識が行きわたる、静謐な写真が好きですが、そればかりでなく、勢いのあるバキッとした田中長徳氏の写真、石川文洋氏の報道写真、中藤毅彦氏のスナップショットの質感と森谷修氏の情感、ああっ、全員どれもこれも好き! 書ききれない! という書評でもなんでもない感想ですみません。

カメラ、持っていないのに「道具の流儀」コーナーの、カメラマン出動セットにも惹かれます(消防士さんくらいに思ってますね。。。憧れです)。
写真集として楽しめるので、手元に置いておきたくなる本でした。

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