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『イーヴリン・ウォー傑作短編集』イーヴリン・ウォー 高儀進訳 白水社、2016年
(表紙画像は出版社サイトよりお借りしました)
 
*著者について*
イーヴリン・ウォー(Evelyn Waugh,1903-1966)
ロンドン郊外ハムステッド生まれ、20世紀イギリスを代表する小説家。日本では『黒いいたずら』、アメリカでベストセラーになった『ブライヅヘッドふたゝび』(ともに吉田健一訳)、『ピンフォールドの試練』『ラヴド・ワン』などで知られる。
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本屋さんの新刊コーナーでウォーの才気煥発そのものの鋭い眼光+ちょっとかっこつけた写真の表紙を見た時は、なんだか懐かしい人に会ったようでテンションがあがりました! 私にとっては一番好きな小説家の一人かもしれません。

なぜ今刊行されているのかな、と思ったら没後50年になるのですね。時々文庫など出ているのですが、ウォーに関する本じたいに接する機会がなかったので、とても嬉しいです。これは日本独自に編まれた短編ベストセレクションのようですし、おそらく本邦初訳のものが多いような。。。訳者はベテランの文学者の方ですが(ロッジ『恋愛療法』など多数を翻訳されています)、あとがきを読むと、本の成り立ちについてはクールなほど謙虚で、言葉少なな印象です。すごいお仕事だと思うので、もっと大々的に自慢してくださーい!

さっそく読んでみました!
と言いたいところなのですが、私は物語の中に入るのに、しばらく顔に水をつけてない人がプールに入りたがらないように、なかなか入れないところがあります。あんまり小説が好きでないのかも…(このなんちて書評ブログも極端に小説が少ないです。読書といえば小説? なのに)。そして正直、この黒っぽい表紙が重く、なかなか手を出せませんでした。

厭世家・人嫌い、気難しく皮肉屋で、ちょっと昔の人だし、とっつきにくいイメージがあるウォーですが、意外なウォーのカジュアルさ、読みやすさを、読み始めてすぐ思い出しました!
どのくらい読みやすくて面白いかというと、英国貴族のひねくれポップな感じを書かせたら天下一品の、坂田靖子さんに漫画化していただきたいくらいです。
そういえば『囁(ささや)きの霊園』(吉田誠一訳、1976年)は早川書房の「ブラック・ユーモア選集」の一つとして編まれていました。そうそう、ブラック(ちょっとブラックすぎたりも)ユーモアという言葉を、久々に思い出しました。そしてそれは私のハートを撃ち抜くジャンルだったのでした。
久々に「ページが減るのがもったいない」「トイレに行くのをがまんしたいくらい中断するのが嫌」「他の事をしている時も、続きを読みたくてしかたない」という、小説を夢中に読む感じも、思い出す事もできました。

受けるイメージを言葉にすると、
陰鬱な光と、雲間を透かす陽光の矢、緑なす田園地帯と重厚な屋敷、田舎者、俗物、奇人変人、随所にすっとぼけたユーモア、恨みつらみと愛憎・愛惜、うっすらと狂気、洒脱さ。そんな言葉が浮かびます。読んでいると、イギリス(行ったことないけど)の空気と光と色合い、石や煉瓦造りの建物、晩秋のちょっと関節に来そうな空気感が浮かぶのです。

ほとんどの短編が面白かったのですが、最初におさめられた『良家の人々』が特に好きです。主人公がありついた仕事が、公爵家のごく若い後継ぎの青年(一族からかわいそうな気〇い扱いされています)をヨーロッパ遊学に連れていく家庭教師なのですが、短いながらこの青年の可愛らしいこと、長編だったら『ブライヅヘッド』のセバスチャンのように、人を魅了してやまない破滅型美青年に育ったことが疑いなさそうなキャラの萌芽を見るようで、わくわくしました。もっともっとと読みたくなりました。

ウォー本人によるドローイングが何枚もおさめられているのも驚きでした!
画家を志していたのを知らなかったので、モダンな版画のようなものには特にちょっと感動しました。

最後に、ヨシケンファンなら気になる、イギリス貴族の人の会話・日本語訳なのですが、本書の訳者による貴族的な日本語言葉遣いも独特で、絶滅していそうな言葉がやっぱり魅力的でキュンときました。
訳者のセンスもですが、ウォーの文体も階級性が表された独特なものなのでしょうね。(原文が読める人に聞いてみたいです)

なんでも、オックスフォード大学(ウォーは放蕩後中退しています)出版局では、なんと全42巻にものぼる完璧な全集を今後4年もかけて刊行予定だそうなのです。お祭りだ🎵 翻訳・出版・読むのも全部大変だー! 原書が読めず、翻訳頼りですので、日本で刊行されることを今から切に願っています。
深まりゆく秋に、ちょっとひねくれたお話が好きな方におすすめしたい一冊です。

最後までお読みいただき、ありがとうございます💕
(追記:同社の同じシリーズの『スクープ』も面白そうです! 読むのが楽しみ💕)
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