9784532263171
『脳にきく色 身体にきく色』入倉 隆 日本経済新聞出版社(日経プレミアシリーズ)、2016年
(表紙画像は楽天ブックスよりお借りしました)

「色気」という言葉にはすごく興味があるのですが(モテモテの人はなぜモテるのか!? ということを研究するのが大好きです)、自分は恋愛ばかりでなく色のセンスがなく、感受性が低いと思うブログ主です。美術の時間では鉛筆で描いた下絵を、色を塗って台無しにすることが多かったです。。。

また、大昔仕事でモデルさんを撮影した写真や印刷物を扱っていて、やはり綺麗に見える色というのが存在するのだなと思いました。もちろんモデルさんとカメラマンさんの美しさや技術、光に負うところは大きいですが、素人的に思ったのはピンクは強いなと。。。そう思っているうち、自分の服や持ち物にどんどんピンクが増えていき、このままでは林家〇ー子師匠化しそうになっています。

そんな、自分にとって苦手分野である色の本を読んでみました。
本書の著者は電気工学科の教授で、視覚心理と照明環境の専門家です。

 「人は、ものを光で見ており、その光は波としての性質と、粒子としての性質を併せ持っています。」
 「光そのものに色がついているのではなく、光の波長の違いを色の違いとして感じる仕組みが人の目と脳にあるのです。人は、目に見える光の波長のわずかな違いを、微妙な色の違いとして感じ取ることができます。」 (「色が見える仕組みはどうなっているのか」より)


どこかで聞いたことがある常識中の常識だと思うのですが、どうしても「光には色がない」という事実が実感としてのみこめないのです。色、ついてるじゃん。。。と思ってしまう色音痴(音痴ってひどい語感ですよね!)に加え理系音痴な私。前半1〜3章の(おそらく普通の人にはわかりやすい)色に関する理科的解説を、完全に理解したとは言えなくて申し訳ないのですが、光源の種類ではなく、光の色が影響するという

 「昼間の白い光の下では味覚が敏感になる」
 「夕方の黄色い光の下では唾液の分泌が多くなる」
 「夕方や夜間に目立たせたいものには、赤色や黄色を使うのは避けるようにしたほうがよい」(プルキンエ現象により赤が暗い灰色に見えるため)、
 「黒っぽい服を着ている人のほうが蚊に刺されやすい」

などなどのお話、「科学的に裏付けられ、立証されている」データたちにグッときてしまいました。
「光の色が心や身体にどのような影響を与えるのか」という章はさらに面白く、

 実は、光の色が人の時間感覚に影響を及ぼすことがあります。同じ時間の経過に対して、赤い光の中にいると実際より長い時間が経過したように感じ、青い光の中では実際より短い時間しか経過していないように感じるのです。
         (「青色光の下では時間が早く経過する」より)

などと書かれています。実験では感じる時間の長さに20%もの違いがあるというのがおどろきです。

このほかにも、緑色の光の中では創造性が高められるという結果が出ていたり、
黄色い光より、白や青白い光のときに(睡眠関連ホルモンの)メラトニンが大きく減るということ(その光にはメラトニン分泌量を減らすとされる460ナノメートル付近の波長を多く含むのだそうです)、
(メラトニンが減ると幸福感などなどが減るといわれますよね。気をつけます!)

テーブルクロスはベージュ色がもっとも癒し効果があったり(人種や年齢でも好みが分かれるそうですが、黄色人種は「肌色」に近い色が好まれるからかもしれないそうです)、
帯にも出ているように、蛍光ペンでマークするのは、「ピンクで塗りつぶす(下線ではなく)」が最も記憶に残りやすいのだそうです(少量なら緑も可、記憶に残りにくいのが黄色なんだそうです)。

最後の章は、多くの人に使いやすいユニバーサルデザインにふさわしい色の話になっていて、私が深く納得する話もありました。
むかしむかし、私は東京の渋谷駅の井の頭線乗り換え口付近で、人と待ち合わせすることが多かったのですが、立っているとご老人が「あの、井の頭線はどちらかしら?」と聞いてくることがよくありました。

乗り換えがわかりにくい原因は、私の頭上に下がっていた当時の「井の頭線→」というサイン板にありました。
「あの方向ですよ」と指し示しても、言われた方は一様にものすごく顔をしかめるのです。
看板は大きいものの、黒地に青い字で書いてあるため、高齢者にはほとんど見えなかったのだということがわかり、駅員さんに言ったか言わないか忘れましたが、その後看板は改良されたようです。

黒地に青はホントいただけませんが(青は加齢に伴い、くすんで見えにくくなるそうです)、赤と黒の組み合わせも、たとえば色弱者の方には識別しにくいのだそうです。白で文字を囲むようにすると、かなりちがうのですね。ハンディを持った人にこそ見やすい(見えない方ならわかりやすい)デザインが増えるといいなと思います。
たくさん参考になる面白い本でした!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
メラトニンを増やしてセロトニンを増やして〜♪
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