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『「タワレコ女子ジャズ部」のお料理レシピみたいな音楽案内』タワレコ女子ジャズ部 駒草出版、2011年
(表紙画像は出版社サイトよりお借りしました)

表紙やタイトルや切り口が、清潔感のある、可愛らしい人、ふわっとふくらんだスカートを自然に着こなした女性を思わせるイメージを受けます。タワーレコード社の「女子ジャズ部」(ほかにも部があるようです)による、女性による女性のためのジャズ盤セレクションです。中身はかなりかっこいいです。美味しそうなレシピもついています。

「女子」くくりが一時期流行りましたけど、私はあえてそういうくくりが好きです。
なぜことさら「女性」をつけなければいけないのか、という素朴な疑問は私にもあります。才能あるアーティストであったり、女子校とか女性政治家とか、女子バンドとか。それだけで特別視されるのは別にいいけど(珍しかったり魅力的だったりと)、名前に女子をつけると、蔑視を呼ぶ場合があるからです。

私の少ない経験なので、全部がそうでないとは思うのですが、若いころジャズに関わろうとしていた時、何度も「女は(打ち合わせに)参加しなくていいです。わかんないと思うんで」「女でしょ」と排他的なことを言われて耳を疑いました。私は知らないだけで女子禁制だったのでしょうか。。。ジャズ喫茶(その頃も絶滅寸前でしたが)では話しちゃいけないとか、そんな時代でしたのよお嬢さん!
すっかりズージャ(ホントにそう言っている人がいました)、いや音楽の世界が旧弊だと思い込んでしまった私。特に、日本のジャズは気難しいイメージがあります。そこでがんばっている女性ミュージシャンの方々を、私は深く尊敬しています。

はっ☆男尊女卑はついヒートアップしてしまってすみません〜。今21世紀でも、どこの世界でも残念ながらあることですが、あえて逆手に取って(も取らなくて自然にでも)、無意味なうんちくたれな奴のいない、女子による女子のための「かっこいい・素敵・美味しい」ジャズ、素直に楽しみたいです。

本書の、そんなよけいなことは感じさせない自然で軽々としたセレクションは、「タワレコ女子ジャズ部」の皆さんの抜群のアンテナ感度によるもの。各章でごはんの時間、デザートやお酒の時間のイメージに合わせたアルバムの紹介が並んでいます。
(それぞれ「BREAKFAST-7:00AM」「LUNCH-1:00PM」「DINNER-8:00PM」「DRINK-BREAK TIME」「DESSERT-AFTER THE MEAL」「SPECIAL-BEST TIME」、「おいしいジャケ買い」などのコラムもあり。)

素敵なお店やバーでかかっている音楽が「何の曲だろう?」と気になることがよくあります。
自分では接触できないようなセレクトだったりすると、お店の人に聞いたり、聞き取りアプリを利用することも多いです。ジャズやおしゃれなコンピレーション(編集)アルバムもたくさん出ていますが、いかんせん曲数が少なくて、個人的スマッシュヒットに当たることはなかなかなかったり。

好みや流行もあるけど、この本を買ってよかったと思ったのは、すべてのセレクトを聞いてみたくなったことと(この本自体が当たりでした!)、うなるようなセレクトだったことです。
考えてみたら、音楽ショップの20人ものよりすぐりのプロが選んだもの、かっこよくないわけがないのですよね。この記事を書きながら、駆け足のようにいろいろ聞きまくっています。

紹介文が短くも素敵なあまり、気になったのはすべてなのですが「BREAKFAST-7:00AM」ではマリーザ・モンチ、「LUNCH-1:00PM」ではローズマリー・クルーニー、「DINNER-8:00PM」ではシャルロット・ゲンズブール、Ino Hidefumi、「DRINK-BREAK TIME」ではマッチング・モール、「ビール追加でー!!」と紹介されているジミー・スミス、ビル・エヴァンスはもちろんグールドのブラームス、「DESSERT-AFTER THE MEAL」の私も愛する友人も大好きな「ロシュフォールの恋人たち」、ブロッサム・ディアリー、「SPECIAL-BEST TIME」のZAZ、ローラ・ニーロ、などなどッ!!
新しめのアルバムに接することがほとんどないので、最近の音楽にも興味津々になりました。
「これは私なら、朝食より夜食かな!」などと自分のイメージでシャッフルするのも楽しいですね。

いちばん意外で、しかもしみじみと今回聞き直したのはNRBQの「all hopped up」(1977)が、焼きたてパンのように香ばしい、愛されバンドの「珠玉の胸キュン・ポップ集」として紹介されていたこと。
個人的に、一見脳天気に聞こえる「It Feels Good」は、確かに胸をえぐるような切ない曲なのです。微妙に最後らへんの琴? のリズムが激しくずれているのが脱力のツボで! これを機会にアルバムちゃんと聴いてみよう〜。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
このシリーズでは『「タワレコ女子ジャズ部」のお出かけが楽しくなる音楽案内」も出ているそうなので、こちらも読むのが楽しみです。雨の日も楽しくなるといいな!
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