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『月のしかえし』ジョーン・エイキン文/アラン・リー絵/猪熊葉子訳 徳間書店、1995年
(表紙画像は出版社サイトよりお借りしました)

 十五夜を見るタイミングを逃したけど、おだんごはしっかり食べたブログ主です・・・!
皆さまはお月さまをご覧になりましたか?

季節もあって、この絵本を初めて読んでみました。
ジョーン・エイキン(エイケン)の名前は気になっていたのですが、なんとなくファンタジーが遠く思える時期が長かったうえ、重厚なイメージを勝手に持っていて、手に取る機会がありませんでした。
結論からいうと、こんなに素晴らしい本なのに、なんで早く読まなかったかな、と思いました。
でも本も音楽もそうですが、その作品が響くというか、出会う時期があるのかな? 今がそうだったのかとも思います。

エイキンは私のイメージとはちがい、どちらかというとコワめのお話が好きな作家のようです。
月のお話というと、眠れない子供にやさしくお話ししてくれるとか、神秘的なお姫さまとかのイメージが浮かびやすいのは日本ならではかもしれません。エイキンの育ったヨーロッパでは、もともと月には物狂おしい・禍々しいイメージがつきものだったような。。。
この作品の月もとてもおそろしいです。だいたいあんな大きい天体が「しかえし(原題はザ・ムーンズ・リベンジ)」してくるなんてコワイ〜。

このお話は、少年が「国で一番のバイオリンひき」にならせてください、と月に願をかける話です。その方法は、靴を毎日片っぽうずつ7日間、月の顔めがけて投げるというもの。(訳者の解説によれば、ヨーロッパでは幸運を願って靴を投げる習わしが伝わっているとのことです)

文字通り顔に泥を塗られた月は怒り、「きまりはきまりだ」から少年の願いはかなえる代わりに、おそろしい呪い(しかえし)をかけ、災いを予言します。少年は願いどおりめきめきとバイオリンの腕をあげますが、果たして押し寄せる苦難を乗り越えることができるのでしょうか。。。? というのがあらすじです。

日本にもやはり、雨乞いの儀式で滝壺とか泉に馬の頭を投げ込んで汚し、龍神を刺激して雨を降らせるようなものがあったと思い出しました。私だって楽器がうまくなれたら嬉しいけど、わざと神様級の怒りを買うなんておそろしや〜!

この絵本の大きな柱は、お話に寄り添い、魅力と迫力を増幅するアラン・リーのすさまじく美しい絵と、音楽の力だと思いました。
月の引力をあらわすような、荒ぶる海の波の色合いの迫る美しさ、幻想的な月の光、野原の奥行きはページを超えて深く広く空間を感じさせ、軽々と画面の外まで広がっていくようです。現代風なのにクラシックで写実的という、不思議な絵を描いた人は『フェアリー』(サンリオ)の画家でもあるのですね。すっかりひきこまれてしまいました。

もうひとつの、音楽の力、これは戦争や暴力、災難を回避し鎮める強い力があるものとして、この作品では取り扱われています。
読みやすい文章ですが、すぐれた児童文学がそうであるように、この作品も子供向けでも妥協のない、むしろ研ぎ澄まされた文体だという印象を持ちました。地味かもしれないけど、存在感のある重要な本だと思います。

もっとエイキンを読みたくなりました。
訳者の猪熊葉子さんもまた、児童文学の名作中の名作ばかり訳して紹介されている方で、今回調べて「この作品も、この本も!」とびっくりしました。いつも訳者とその文体が気になる私なので、猪熊さん訳のエイキンをまた読んでみようと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回は9月20日(火)に更新の予定です。
その頃には秋晴れのいいお天気になっているといいですよね♪
皆さまも楽しい週末をお過ごしくださいね。
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