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『おちゃめな老後』田村セツコ WAVE出版,2013年
(表紙画像は出版社サイトよりお借りしました)

美人よね〜、というのがこの表紙を見て出た第一声でした。
まるで若い女子が、文化祭で憧れのイギリスのおばあちゃんの仮装をしているような。でも、これが田村セツコさんのリアルで、中に載っている別テイクの写真もちょぉぉ可愛いのです! 

写真といえば、「寝袋でおひるね」と題された、そこは公園の植え込みでは。。。という衝撃写真もおさめられていますが、やはりこれは、日本では田村さんか森茉莉しか許されない「私の美の世界」だと感動しました。

先日『おちゃめな生活』(河出書房新社、2016年)の感想を書かせていただきましたが、この本はそれよりも前に出版された、「おちゃめ」シリーズになります。
この『おちゃめな老後』も、読んでいるうちに何かこう、たまっていた疲れがすーーーっと抜けて楽になり、目が自然と見開き、視界まで明るく元気になる効果があるのです。もしお疲れの方がいらしたら、一度お試しくださいませ(効果に個人差があるとは思いますが)。

『カワイイおばあさんのひらめきノート』 (洋泉社、2016年)という新刊も出されましたね。
カワイイ魔女の覚書的創作ノートのひみつが載っているようですので、こちらもいずれ読むのが楽しみです。

2010年代に入ってから、活躍を待っていた人がたくさんいたのだな、と思うほど田村セツコさんの本が出て人気を博しています。
確か2003年ごろ、私も行きましたが弥生美術館で田村セツコ展があり、サンリオからキャラクターグッズが出ていました(当然買いまくりました!)。そのあとはあまりお仕事に触れる機会がなかったような気がしていました。

この『おちゃめな老後』では、おそらくその時期に、6年間自宅でお母様と妹さんの介護を同時にされていた話も「介護の魔法」という章の中で語られています。

 「介護はつらいものだ」ってみんな言うでしょ。「家で看るなんてとんでもない!」って。母や妹がそれを望んだ、というのも大きな理由の一つだけれど、みんながつらいつらい、と言うから、逆に私は介護に興味を持ったんですね。やってみたい、って。それに、実際にやってみて、私って意外と介護に向いていると思ったのが発見でした。
                      (「介護の魔法」より)

田村さんのエッセイを読んだ方ならおわかりのように、田村さんはめちゃくちゃ前向きです。
それは生来の好奇心、審美眼、センスから来るものだと思うのですが、「コツは「気づく」ことかしら。同じ出来事でも、嫌な面や不便なところを探そうと思ったらいくらだって見つかるけれど、そういう面ではなくて、明るいほう、美しいほうに意識を向けるんです」と語る田村さんに、矜持というか、ピリッとした美意識を感じるのです。あと、どうせなら面白い・きれいな方がいいわ! といった心持ちを。この本ではまた、「その気になる」力、夢見る力についても書かれています。

新しい方の『おちゃめな生活』が、生活の知恵についてまとめてある実用のような本だとしたら、
この『おちゃめな老後』は、人が避けて通れない時間の経過についての、読みやすいけれど深いエッセイが主体になっています(もちろん参考になる知恵がたくさん!)。

いつも田村セツコさんを想像すると浮かぶ曲に、On The Sunny Side of the Street(「明るい表通りで」)という曲があります。
いつも暗い気持ちだった僕が、君のおかげでパッと明るくなった。君に教わった歌をこう歌うんだ、明るい日なたに足を向けて歩けば、人生は楽しくなるんだ、という歌詞です(ジャズスタンダードでもありますが、元々はミュージカルの歌のようで、セツコさんにぴったりです)。

「老後」というと、心配が先に立ったり、できないことが多くなったりするのでは、というネガティブなイメージがあります。しかしそこは田村さんなので、できないことが多くなってくる、なんてカワイイんでしょう、面白い。という考えを、つえ(田村さんが大好きなアイテム。英国風マニッシュなおじいさんのイメージのようです)から星と花を振り出すように、私たちにかけてくれるのです。

最後までお読みいただき、ありがとうございます💕
ものごとをムズかしく考えない姿勢、それを「おちゃめ」と呼びましょう・・・とある田村さんのように、いつかなりたい、いや今週末からなろうと思います。
次の更新は9月13日(火)を予定しています。皆様も素敵な週末をお過ごしくださいね!

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