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『たてもの怪談』加門七海著 エクスナレッジ、2016年
(表紙画像は出版社サイトよりお借りしました)

「あっ、加門さんの新刊!💕」と、嬉しさのあまりうっかりコワイのを忘れて買ってしまいました。
先日感想を書かせていただいた『墨東地霊散歩』で、同書を加門さんのいちばん新しい本と書きましたが、こちらの『たてもの怪談』が8月に出たばかりのピカピカの新刊です。

私は宗教やオカルトに詳しいわけでも、視(み)えるんですなわけでもなく、ただただ怖がりの小心者です。
なぜわざわざ怖い本、それも「怖い」界の華麗でいなせなおねえさま、加門さんの本を読むかというと、どうも「楽しい実用書」、もっというと「たくましい実用書」として読んでいるからかな? と自己分析しています。

(つまり、あまりホントのことだと認めたくないのですが、個人的に近年ちょいちょい怖い思いをしたことがあるからなのです。自分がこんなにそっち系の「対策」を必要とすると思いませんでした)

私の話はよけいで申し訳ないのですが、「個人的にちょいちょい怖い思いをし」ているのが、まさにこの「たてもの系」ですので、たいへん実用的にも興味深く読んでみました。
加門さんの文体は、前にも書いたように読みやすく、気っ風がよくて楽しいのです。
ええ、とっても怖いんですけれど(涙)ギャップ萌えです。

前半は、出版社サイトによれば「幻の連載」といわれた「引越物語」(を修正加筆したもの)です。
新築・賃貸・ご実家問わず、自分が大金を払って、長いことそこの空気を吸う空間については、「良い場所でありますように」と願わない人はいないと思います。長い時間を過ごす会社や学校であっても同じですよね。

「引越物語」での加門さんも、「古き佳き、庶民のための日本家屋」「築五十年は経過した木造平屋」を理想としつつ、お引越を視野に住まい選びを悩まれます。
風水のプロでも霊能者でもない、と謙遜しながらも、そこは天下の? 加門さん。安心立命できる物件の案件を見出さんと、家内安全、身体健康、除災招福、商売繁盛の見極めを探ります。「すべてがつつがなくあるための家とは・・・・・・。」

 「運だよ!」
 私は膝を叩いた。
 運の良い家にさえ住めば、すべては解決できるのだ。
 運さえ良ければ、多少風水が悪かろうが、お化けの通り道になっていようが、問題ない。

                           (カッコイイ!!←ブログ筆者)
(中略)
 諦めないで、頭を使って考えて、本当に良かった。万歳。
 だが。
 またしても、またしても、だがしかし。
 ここでまたもや、新しい疑問が生じてしまったのだ。
 「・・・・・・で? 何なんだよ、その運の良い家ってのはよお」  (「引越物語」より)

長い助走期間を経て、著者は「その土地との相性」も感じ合わせながら物件めぐりを始めます。
「退屈」な街もあれば、高揚感に近い「わくわくするような感覚が身の内から湧いてきた」物件にも当たります。このわくわく物件、写真を撮るとスゴイものが大量に写ってしまうのですが、著者はつちかわれた経験と人脈を駆使して「問題ない、むしろ面白い(!)」物件としてそこを手に入れることになるのです。
ご研究柄、何もいない「無菌室」のような空間だと物足りないとのこと、さすが加門さんなのでした(さすがさすがすみません)。

著者と因縁(?)の関係である、某神社に出向いてもらい、新居マンションの「お祓い」を依頼した時の逸話が秀逸です。
神様のペナルティであるのか、失礼な対応の若手禰宜(ねぎ)氏に「お化けごときで、誰がお祓いを頼むかあ!」(漢前💕)と内心毒づきつつも、「禰宜がどう思おうが、多分、私のほうが神社界には顔が利く。(中略)コネを使うのは好きではないが、こういうときにコネを使わずして、神社のコネなどいつ使うのか。」と本格的すぎるご祈祷を段取りする著者(ステキ💖)。
そして迎えた、由緒正しいお祓いは、神職も一時フリーズするほどの内容、ただで済むわけはなかったのでした。。。

ここまで読んで下さった方は、私が怖い話を避けよう避けようとしているのに気付かれましたでしょうか。
怪談好きの方に「ぜんぜん怖くないじゃない」と加門さんが誤解されないようお伝えしておきたいのですが、読んだはしから忘れたくなるくらい怖いです。今現在、この文章はお香を焚いたり、手持ちのお守り・お祓いグッズ総動員で書いています。怖がりの私がここに記せないこと、私の筆力ではとうてい加門さんのその手の話を書けないことをお詫びいたします。

後半がまさにその、文にも書けないおそろしさの話が続くのですが、これは私にとってだけかもしれませんが、とてもリアルな感じがするからそう思うのでしょうね。霊感とかないのに(涙)。
いいわけのようですが、出版社サイトの作品紹介のページより、目次を引用させていただき、不完全燃焼に終わりにさせていただきます。皆様の涼しさというか鳥肌に役立ちますように。
どれがいちばん怖かったですって?? 全部ですよウフフ(泣)

■目次
引越物語
道の話 ――終わらない話――
幽霊文化財
ホーンテッド・スウィート・ホーム
夜遊び好き……らしい
ひとり旅の醍醐味
お化け屋敷の話
東京の「顔」――風水の話――
在宅怪談
あとがき
(エクスナレッジ 雑誌・書籍サイトより)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
加門さんラブを語らせていただきました。実用書としては『お祓い日和 その作法と実践』を愛読しています(必要にせまられて💖)。
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