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『異装のセクシュアリティ 新版』石井達朗 新宿書房、2003年

私の趣味の一つに「ふだんとちがう格好をするのが好き」というのがあります。
何と呼べばいいのかわからない趣味なのですが、仮装が近いのかな? キャラクターを体現したい方向ではないので、コスプレとはちがうのかな。
などと仮装欲が出てくると、どんな格好をどんな時、どう見られたくてなんでしたいのかな? などと考えていました。

考えた結果、ふつうの仮装(というのも変ですが。軍服とか着てみたいです)も好きですが、自分の中でよくわからないジャンルがずっとあり、それは「女装」だったり「ドレスを着てつけひげをつけたい」だったりします。
私は女性で、性別に違和感を感じていないのだから、ふつうに女性の格好すればいいじゃん。で、ひげをつければいいでしょう。と自分で思っていたのですが。。。

先日、以前から好きで読んでいたブロガーさんの文章を読んでいたら、乱暴にまとめると「自分は女であるが、男になったうえで女装してみたい」という趣旨のことが書いてあり、そうなのわかってくれる!? と共感するところがありました。私は男性になりたいわけではないのに(そのブロガーさんもおそらく全面的にそうではない、グラデーションな感じ)こう思うのはなんでだろう?
いや、私以外の人からは、心の底からどうでもいい話ではあるのですが。なんと表現したらいいかわからなかった霧が少し晴れたような。。。

ふつうの(ふつうって何だろう)異装(異性装)だったら、「男装の麗人」であったり、女装子さんや男の娘(こ)さんのように、まだ理解されやすい気がします。私だって、例えば身近な男性が「女性になって男装したい」と言いだしたら「ややこしい! 男性なんだからそのまんまやればいいじゃん」と思います、人のことは。

このもやもやを抱えて、異性装に対して興味があったのと、カバー写真の素敵な女装家(どなたかわかりませんが、ドラァグクイーンに近い方だと思います)にひかれてこの本を読み出しましたら、深い深い世界が広がっていました。とても書ききれないので、ダイジェスト(ですらない部分的)な感想になります。

私のもやもやは、本書を読み出してわりとすぐ解決しました。異装というのは異性の格好をすることだけ指すのではなく、「稀には、同性の衣装であっても、それを身にまとって「仮装」することに格別の情熱を燃やすことを「トランスヴェスティズム」と呼ぶ」とあります。救われ…た感じはしなかったけど、同性の格好に対してもありなんですね。
言ってしまえば、ロリロリな「アイドル」たちも猥褻な女装であると思いますので。

単純に、男性の骨格や筋肉で表現する「女性性」は、一般の女性の体格では出せない一種独特の色気(異様さと紙一重)を出すことができ、衣装を着脱した時のギャップが、女性の比ではない幅が出たり、「男性」という社会的に有利な性に戻れ(ない人もいますが)るのも魅力かと思うのです。それこそグラデーションがありますが。

さらに、女装家について思っていた疑問、「なぜあえて男性だとわかるような女装をするのか?」(すね毛を出してハイヒールをはく、など)も少しわかった気がしました。だいたい、自分の「ドレスを着てひげ」も近いものがあります。もちろんいろんな方がいますが、女性になりたいわけではない、異性愛者が多いとのこと。
女装家とニューハーフとMTF(またはトランス)とゲイ(ホモセクシュアル)の違いもわかりやすく、この女性版についても再学習しました。

ところで、本書は出てからかなり時間が経ったこともあり、風俗的な観点からは古いものとなりますが、身体やセクシュアリティをめぐる考察と、その研究資料としてはここまでの情報量の本はなかなかないと思います。今は、単純に男性・女性の二元論で決めつけられる傾向ばかりではなくなってきましたが(逆に保守化している気もしますが)、旧版が出版された時点(1993)では社会は全く硬直していたと思います。
 「(中略)「絶対的女性」「絶対的男性」など存在するわけはなく、人みな男性性/女性性が混ざった中間的存在である。」(「はじめに」より)
と言い切り、「自己充足的にひたっていればそれですむ性の規範・性のステレオタイプから、人が逸脱し、それを蚕食しさえもする<行為と表現のダイナミズム>を、身体を軸にすえて透過しようと」試みた本書は、今でも貴重なものだと思います。

著者は舞踏(古代から現代舞踏まで)の身体表現についての評論家、先生でもあります。
ダンスが好きな私は、古代信仰のシャーマン的要素を受け継いでいるような、舞踏・演劇にまつわる異装の歴史、「性をこえ、人をこえる」役割を担った「異装」の圧倒的情報量も興味深く読みました。

特にアメリカ先住民やインドにみられる、性別を超えた社会的位置を占める人たち(多くは宗教的儀礼に携わっています)の伝統を初めて知り、さらに興味がわいてくるのでした。

ここまでがなんと第1章「異装という身体装置」ですので、あとの章「ゲイ繚乱」「フェミニスト・パフォーマンスの光芒」「レズビアン・ルネッサンス」のことは書ききれず、中途半端ですみません。控えめに言って、もんのすごく面白かったとだけ書かせてください。。。特に、付録■徹底討議「ヒジュラ(西北インドなどに見られる、去勢された男性が中心の聖職者?共同体)に学べ! トランス社会の倫理と論理」が濃すぎておすすめです。特に三橋順子先生(女装家)のお話が・・・バタッ(力尽きる)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
楽しい週末をお元気でお過ごしくださいますよう。
次回は7月19日(火)を予定しています♪

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