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『最初の舞踏会 ホラー短編集3』平岡敦編訳 岩波書店(岩波少年文庫)、2014年
(写真は出版社サイトよりお借りしました)

その昔、学校を卒業する時の作文(とても論文といえる代物ではなかった)に、この短編集の表題作の作者レオノラ・カリントン(レオノーラ・キャリントン,Leonora Carrington)を選びました。当時は研究家も作品の翻訳もほんの少ししかなかったので、この本が出ていると知った時は、思い入れある画家・作家がなんと岩少に! 読むしかないでしょう! と色めき立ちました。

岩波少年文庫の「ホラー短編集」というシリーズは、今まで英米文学からのアンソロジーが二冊出ています(『八月の暑さの中で』『南から来た男』、金原瑞人編訳)。三冊目の本書は、フランス文学の短編を集めたものです。

ホラーといっても、このシリーズの印象は「ふしぎな話」。読みやすいのに優雅さ、気品さえ漂う上質な掌品集。内容といいサイズといい休暇のお供にぴったりです。「それからどうなるの?」とソファに体をあずけるように、お話に身をゆだねられます。先の二冊の金原氏の訳文も感じがいいなあと思うのですが、平岡氏の訳も明快・軽やかで素敵だと思いました。ちなみに平岡氏は、フランス探偵もの、ミステリー、ロマン・ノワールの代表的な翻訳家でもあるとのことで、納得です!

さてさて、かんじんの『最初の舞踏会』を読んでみました。

社交界にいやいやデビューした主人公の少女は、自分のお披露目の舞踏会が嫌すぎるあまり、ひとりしかいない親友に身代わりを頼みます。親友がたまたまハイエナだったため、まず人間の顔を作るところから始めます。バレないか心配するハイエナをよそに、暗いから大丈夫よ、と呑気にサボる主人公。はたして首尾よくいくのでしょうか・・・?

お話はたいへん短く、あらすじを全部書いてしまいそうになるくらいです。
行間がゆったりした組み方なのもあって読みやすく、平岡氏の訳は洒脱・楽しげで、主人公と、作者の分身であるハイエナの、はねっかえりというか弾むようなエネルギーが感じられました。
対して、初めて日本にカリントンを紹介した澁澤龍彦氏(
『仏蘭西短編翻譚集成Ⅱ』所収)の訳文は、幻想的でシュールな側面を強調してある気がします。カリントンの原文からは、気のせいかエキセントリックな匂いがしますので、そのあたりが訳者によって表現がちがって面白いですよね。

そのほかには、ペロー、ゴーティエ、モーパッサン、シュペルヴィエル、アポリネール、エーメ、ルブラン、メリメ・・・などの、アンソロジーには欠かせない作家が揃っています。幻想と推理のちょうどいいさじ加減がとても快い読み心地でした。古典にありがちなすっきりしない終わり方でも読後感すっきりという不思議な気持ち。

年代では17世紀から20世紀と幅広く、古いものも多く、冗長な部分もあるのだろうと思うのですが、訳文によって読みやすく配慮されているのか、古い絵画が埃を払われて鮮やかになったようで、非常に面白かったです。
カリントンは別としていちばん面白かったのは、自分でも意外でしたが、初めて読んだメリメの『イールの女神像』でした。これは平岡氏の訳で読めてよかったです。
関係ないですが私は文学少女というよりは漫画少女だったので、こ・これはもしや『エロイカより愛をこめて』に出てくる「ケルンの水、ラインの誘惑」の元ネタ・・・! と孤独に盛り上がっておりました。

夏休みの読書におすすめです。小学校高学年からのお子さまにもですが、大人にもぜひ。

最後までお読みいただきありがとうございました。
カリントンの「耳ラッパ」(すちゃらか養老院的な)もいいのです♪
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