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『コクトーの食卓』レーモン・オリヴェ著 ジャン・コクトー画 講談社、1985年
(写真はAmazonよりお借りしました)

皆さまは、きっと美味しいフランス料理を召し上がったことがあるのではと思いますが。。。

大人になったらきっと美味しい「フランス料理」がたくさん食べられるんだ、と子供の頃の私は妄想しておりました。しかしついぞ縁がなかったため、その美味しさを知らないままで来てしまいました。
(高いのに美味しくない、なんじゃこりゃ!? という謎な料理なら食べたことが・・・)

少女漫画の読みすぎだと思いますが、大人になったらもれなく
白い鎧戸のついたフランス窓から緑の風が吹き込む清潔なホテルのような部屋で、休日は自堕落に丈の長いシャツ一枚で過ごし、惰眠をむさぼっては美味しいものを拵え、恋人とわくわくしながら食べて楽しく過ごせるもんだとばかり思っていました。いったいなんの森茉莉の影響だ。

そんなわけで、私の中のフランス料理はその頃から本の中にあって、字面で想像するものなのです〜。
なるべく料理の内容が想像できにくい名前のもの(詳しい方はご存知だと思いますが)が妄想には向いていて、この本に出てくるコクトー(詩人・作家)のお気に入りの料理の名前にわくわくします(実際に作るのは大変そうです!)。

この本の著者である「食の魔術師」と呼ばれたレーモン・オリヴェは3つ星レストラン「ル・グラン・ヴェフール」のオーナーで、現代のフランス料理の発展に寄与した先進的な料理家です。親交があったコクトーたちのためにふるった腕前、考案したレシピがここには惜しげもなく書かれています。

 「私は美食家というわけでもなければ、とりたてて健啖家というわけでもない」というコクトーの序文につっこみを入れながら、スープ/前菜/卵料理/魚貝料理/肉料理/野菜料理/デザート/カクテルと読んでいくと、メニューから立ち昇る香気にうっとりしてきます。というかお腹がぐー。

  ゲノレ
  これこそ、なんといっても世界で一番おいしいスープだ、というのがジャン・コクトーの考えだった。どうかすると、こればかり何度も続けて注文することもあった。(ゲノレ・・・舌びらめとムール貝のポタージュ、「スープ」より)

  青海亀またはつばめの巣のコンソメ
  じゅずかけ鳩のフランベ
  少数の友人たちを除けば、パリでは決してむりにおすすめしたことのない料理が、このじゅずかけ鳩のフランベである。じゅずかけ鳩というのは渡り鳥の一種で…(中略)ジャン・コクトーはじゅずかけ鳩のロースト ーーそれも非常にきめ細かい肉にスカンディナヴィアの香草で香りをつけ、切るとばら色の血があふれだすようなものが大好きだった。(「肉料理」より)

  牝鹿のトゥルヌド
(フィレ肉の中心の極上の部分) 栗のピュレ添え
  ベアティーユ(仔羊などの内臓)の串焼き
  山しぎのマスプローヌ風
  フィレ肉の網焼き 
サント・ソスピール風
  (しばしばコクトーが滞在した、ニース近くのサント・ソスピール荘という美しい別荘で、著者によって供されたステーキ) 前にも述べた通り、ジャン・コクトーは盛りすぎの皿や塊の大き過ぎるのを好まなかった。焼き方はいつもブルー(かすかに表面を焼いただけの極端な生焼き)をご所望だった(後略)

たくさん引用しておいて何なのですが、肉料理の項を読んでいて、鳥獣を「髄まで喰らい尽くす」という印象のフランス肉食・狩猟文化と、自分の胃キャパとのちがいをあらためて感じました。とはいえ、魚貝料理も美味しそうで、もしかしたら自分の作るごはんにもなんちゃってで取り入れられるかも、と思いました。ほかにも牡蠣のカクテル(前菜)のつくりかたや帆立貝、まとう鯛を使った料理、アイスクリームの菫添え、などなどッ! 美食絢爛な内容です。

コクトーや他の文化人との料理にまつわる思い出、美学、淡々としたレシピが繰り返されている滋味溢れる文章の他に、コクトーによるリラックスしたペン画がふんだんに味わえるのも、この本の醍醐味です。見ていると、明るい南仏やイタリアの底抜けの陽光が思い浮かびます(行ったことないけど)。絶版になってしまったのが残念ですが、夏にぴったりの本だと思うのです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
来週は7月12日(火)の更新を予定しています。
皆様〜、素敵な週末をお過ごしくださいね!

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追伸;私は週末、ここに載っている「目玉焼き」を作るんだ! と燃えていますが(卵なら手に入ります)、お皿が割れないかが心配です。

  私の目玉焼きの作り方はこうである。
  パリ磁器で出している美しい模様のついた皿か、純白の皿に、バターを少々落し、皿を火にかける。バターが溶けたら、必要ならさらにバターを少々加えて、皿の底が溶けたバターでまんべんなくおおわれるようにする。そこで火から下ろす。バターはほどほどに薄く皿全体にひろがるくらい。皿は熱しすぎないように気をつけること。バターが溶けて非常に熱くなり、しかしまだノワゼット(※はしばみ色、焦がしバター)にならない程度である。(中略)さて、そこで皿の底に適当に塩をふる。(中略)あいかわらず火から下ろしたまま、皿に適当な数の卵をひとつずつ割り、必要ならフォークの先で白身の形を整える。実際、非常に新鮮な卵(使うのはぜひ新鮮なものだけにしていただきたい)は白身がたいへん稠密(ちゅうみつ)で、なかなか均一に焼き上げにくいものである。もう一度火にかけ、初めは弱火で、終りに近づくにつれて火を強めてゆく。黄身のひとつひとつにほんの少し胡椒(ブラック・ペッパー)をかけて供する。                
                                (卵料理「目玉焼き」より)