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『八木重吉詩画集』(詩 八木重吉/絵 井上ゆかり/童話屋、2016年)
(写真はamazonからお借りしました)

少し前、子どもたちと接して読んでいる本の話をしていたことがあります。今どきの子どもも、ずいぶん古風な本を読むのです。今どきの子ども、などと一括りにするのも、一人一人全く違う人格なのだから、失礼な話なのですが。

詩集もけっこう人気がありました。子どもも大人も忙しいから、どこから読んでもいい、短い文章は読みやすいですよね。ただ読みやすいから、というだけではないような子もいて、ハイネやランボー、ヴェルレーヌ、アポリネールなどの詩集をずんずん読んでいく子もいて、びっくりさせられました。何か他にいい詩集はありますか、と聞かれて八木重吉をおすすめしたことも今回思い出しました。

最近出たばかり(2016.3初版)のこの本は、パステルまたは水彩の、優しいひかえめなフルカラーの画がそっと添えられた詩画集になっています。『のはらうた』で知られる童話屋から出ています。判型はA6で、小さな手帳のような大きさの装丁の美しい本です。

他の方はどう感じられるか、こんな感想は言うだけ野暮な話になってしまいますが、私はこの本を、自分が調子のよくない時にプレゼントされたら嬉しいだろうなあと思いました。
その時は読めなくても、回復期によりそってくれる優しい本として、そばにあったら嬉しいと思います。ちょっと胃が疲れてるときに良い食べ物に似ていて、滋養という言葉がぴったりです。

内容は、詩に絵はいらない、という考えであった編集者側の考えを変えたほどに、とけあった詩と絵の共作になっています。井上ゆかりさんの絵に違和感を感じる人はあまりいないのではないでしょうか。聞いていて空気になじむ音楽のように、その表現はじつは難しいものなのではと思いますが、全編にうっすらと流れる悲しみにもかかわらず、ページを開くたびにほっとします。

八木重吉の名前と詩が結びついたのは私の場合けっこう遅く、テレビで流れていた曲の歌詞で知りました。「心よ」という作品です。

 こころよ

 では いっておいで


 しかし

 また もどっておいでね


 やっぱり

 ここが いいのだに


 こころよ

 では 行っておいで

        (「心よ」)


この一編で語り尽くす言葉を持たないのですが、わかりやすい言葉を連ね、しかも簡潔に詩情を編んで伝えることができるというのが、言葉の芸術なのですね。すぐれた歌詞として、作曲する人が昔からたくさんいるのもわかるのです。

今回少し八木重吉のことを調べたら、宮沢賢治とほぼ同世代なんですね。二人は面識がなかったようですが、草野心平(二人に声をかけて『銅鑼』という同人詩誌を作っていました)という共通項に恵まれて、繋がっていたというのを知りました。大正モダンな皆さんだったのですね。同じく夭折の詩人といえば立原道造ですが、この方はもう少し後(昭和初期)の世代。だんだんつながってきました。

詩の本のことは難しいですね!
もっと本当は引用してみたいのですが、その世界をこわしてしまいそうですし、
絵だってうっかり邪魔になりかねない繊細なものなのに、ましてや余計な文章をやという感じで気がひけますが、もし書店や図書館でお手にとったら、緊張をとかしてくれるような小さな絵をご覧になってみてくださいね。と言いたくて書かせてもらいました。

今日も地味な文章を、最後まで読んでいただきありがとうございます。

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