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『フランス人ママ記者、東京で子育てする』西村・プペ・カリン著、大和書房、2015(写真は出版社サイトよりお借りしました)

この本は図書館で借りたのですが、人気があってけっこう待ちました。やっと読めて嬉しかったです〜。

著者はタイトルにあるように、日本在住でAFP(フランス通信社=L'Agence France-Presse)記者として働く女性です。母国フランスでは音響エンジニアとして働いていたのですが、日本への興味が高まり、『日本人(Les Japonais)』『日本漫画の歴史(Histoire du manga)』などの本も出版、日本にジャーナリストとして定住しています。(産後は首相に同行して福島第一原発の取材をするなど、硬派なお仕事の方でもあります)

ご夫君は漫画家のじゃんぽ〜る西氏で、この作品の表紙・さし絵でも共作しています。
私は西氏の『パリ愛してるぜ〜』『かかってこいパリ』などの強烈な作品に、自分のおフランスコンプレックスを粉砕され、ノックアウトされてからのファンです。彼の作品は、自虐ネタを織り交ぜつつの面白しょぼおかしいフランス生活が、キュート(何となく蛭子能収も連想するので、シュールな感じも)+リアルすぎてグロめの画風で描かれています。

西氏が自分のキャラを「あまりもてない日本男性」として描いているイメージだったので、奥様(著者)が降臨された時は失礼ながら驚きました! しかも(やっぱり?)フランセ〜ズ。そしてお子様も! 

西氏の『モンプチ 嫁はフランス人』でも、もちろん愛情を持たれての上でですが、けっこー突き放した冷静な観察眼(たぶん奥様もカブトムシも一緒のフィルター)で描かれていた著者。
複雑な配線つなぎを得意とし、黒ずくめの出で立ちでハードな機材を操る剛の者、という奥様像が垣間見えて感心しましたが、本当はもっとキレイな人なんじゃないー? もっと可愛く描いてあげて!! ちょっとぉ! 優しくしてあげてー!!! と勝手に胸を痛めていた矢先(すでにカリンさんのファン)、この本の順番が回ってきました。

一読して、さすがジャーナリスト! と思いました。
「超・理論派のわたし」と自称する著者は、妊娠中から子育てまでの環境の日仏のちがいを克明に報告しています。
高い出生率で知られるフランスでではなく、あえて日本での出産を選んだ著者は、そのちがいもメリットとしてとらえて柔らかく順応していきます。もともと日本びいきの著者、「肌に合った」のかもしれませんが、結論は「日本のほうが育てやすい」のだそうです。

それにしても、子供を取り巻く環境で日仏(東京とパリ)ではこんなにいろんなことがちがうのですね。

妊婦健診から始まる出産費用、産休中のお給料は全額社会保障でカバーされ、まったくお金がかからないフランス(高い出生率はここから来るとされています)。対して補助はあるものの、最初はなんだかんだで35万円〜100万円かかってしまう日本。無痛分娩が一般的(自然分娩は17%)なフランス、無痛分娩はあまり選択されない日本。

外国人のリスクを避けるためなのか、医師に診療拒否まで受け、日本での産みにくさを感じた著者。彼女の素直な疑問もたくさん書かれています。そのひとつが、100g単位で増量をうるさく言われる(高齢出産のリスクがあるなら特に)体重測定で、「服を着たまま体重測定して大丈夫なのか。できるだけ同じ条件で測るべきなのではないか」という素朴な疑問にうなずきました。私も「意味あるのか」と思ってました。冬服を脱いだだけで体重が減少したため、努力をほめられたそうなのですが。

最近話題になり、やっと対策が本格化してきた保育園問題ですが、もちろん日本も大変だけどパリはさらに充実していないのだそうです(保育園利用は10%に満たない)。なのに女性が乳幼児を抱え働かざるを得ない状況で、3歳未満の子供の半数がヌヌー(保育ママ)を利用しているとのこと。

そうでした、フランス(特にパリ)は大人の街でしたよね。デコボコの石畳の上でベビーカーを走らせて来ても、入店拒否のお店も多く、やっと入れてもおむつがえスペースなどあまりないようです。
個人主義が行きすぎている場合もあり、日本のような保育サービス(地域の子育てクラブなど)も充実していないそうです。みんな一斉にやる運動会も保護者会もないのだそうで、新鮮なものとしてとらえられています。

もちろんどちらの国にも一長一短があります。著者はそこも踏まえて日本のよさ、育てやすさを改めて書き出しています。

どうしてヨーロッパの中でも、フランスが突出した出生率を誇るのでしょうか?  やはりお金?
カリンさんの分析を読んでいると、仮にもし出産や育児にお金がかからなくなっても、日本ではそんなに出生率が上がらないのでは?という気がしてきました。

答えはフランスは「愛の国」だから・・・モナムール。というのは半ば本気で、
子供、家族(婚姻血縁関係含まない場合も)に対するポジティヴなイメージ、
そしてカップル間の愛情表現、さらにレディーファースト。これが日本に足りないのでは、と思ったしだいです。
ぜひぜひ、著者にはどんどん本を書いていただきたいです。最強の観察・発表ご夫婦だと思います。

書き足りないですがこれで今日は失礼します!


最後までお読みいただいて、ありがとうございます。
お一人お一人に、お礼を申し上げたいです。

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