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(『チマチマ記』長野まゆみ著、講談社、2012)

*次回は5月17日(火)更新の予定です*

このお話は、美味しいものがたくさん出てくる宝来(ほうらい)家に弟といっしょにひろわれてやってきた、猫のチマキがのんびりと語る家庭(と料理)の観察記です。読むとおなかがすく本です。

でも、野田あいさんの美味し可愛い表紙イラストがなければ、猫が主人公だとはすぐにわからないかも!
それくらい、チマキや弟のノリマキが猫である、ということは全く語られません。(要所要所に、にゃん、とか首輪、という言葉が出てくるのでわかりますが)
そういえば人間だって、小説に出てきたとたん、わざわざ「自分は人間です」と言わないですものね。

猫好きの方はもちろん、猫愛に満ちた「にゃんディテール」の妙に、しょっぱなからぐいぐい引き込まれていくお話だと思います。
でも正直、そこまで「猫大好きー!! 猫にまっしぐら!!! ではないので、猫至上主義世界がわからない。。。」と思っている方(実は私も、生き物としては可愛いし好きだけど、猫ちょっとコワイ派です)には、あまり面白くない書き方かといえば、そこは長野まゆみさんのキュッと抑制が効いて美意識で締(し)めた冷静な文体。猫愛ではあるけれど、距離感がベタベタなわけではありません。淡々としているけど、素直でかわいらしい主人公(チマキ)の視線は、いつのまにか家に溶け込んでいる猫そのままに自然で、軽やかに読み進められます。

チマキは
  「(前から見ると白っぽくって、端午(たんご)の節句のチマキみたい)、その耳が焼きプリンのキャラメル色のマーブルで(中略)毛色はだいたいが白っぽいクリームで、おなかのところにひとつだけ、耳とおんなじ色のうずまきになりかかった斑(まだら)がある。
弟のノリマキは鼻の先だけ粉箱に顔をつけてきたみたいに白くて、あとはチョコレートブラウンだ。光のかげんで、ココアパウダーをまぶしたようになる」(本文より)

とあるように、和にも洋にも食べ物を連想させる存在です。このおうちの話は実に美味しそうな食べ物の話ばっかり! 「たらのすり身のふわふわ団子」、とか、「半熟いり玉子にクレソンをたっぷりのせたサンドイッチ」とかとか!
その美味しい食べ物を主に毎日作り出しているのが、イレギュラーな大家族構成(個性派ぞろい)の実家に、ごはん係=料理人として就職して住み込んでいる息子、カガミさんです。

カガミさんは長野まゆみワールドのメインキャストらしく「細身・お洒落・寡黙・繊細・病弱(すぐに熱出しそう)」な外見、面倒見の良い一面も持っていそうな感じの青年です。仕事場の台所はすみずみまで清潔に管理、「手つきは、お茶のお師匠さんみたいにきれい」で無駄のない所作が目に浮かびます。長野作品のこうした登場人物の言動を読むと、何かすっきりした気持ちになるのです。

宝来家には、カガミさんの先輩であり実は親戚の桜川くんも同居していて、カガミさんに飄々(ひょうひょう)と近づいては、軽くなぶるというか翻弄しています。彼もやはり長野ワールドの登場人物に見られる「美意識Sキャラ・アクマ・落ち着き・包容力・洒脱」な要素がある人なのですが、桜川くんがカガミさんの思い人であるのだろう、ということは思わせぶりな記述でわかるくらい。日常に紛れてうっすらしています。

この、外国人向けのキッチンを持つ古く広い家に住み込む青年+美食と料理+BL(ボーイズラブ)的要素、は、著者の作品『白いひつじ』とも重なるモチーフです。『チマチマ記』は、当初レシピ集としても出るかもしれないといわれた作品なので、主に食べ物と食べ物と猫、という美味しいものに焦点が当たりまくったものとなっています。どれも体にも良さそうです。

私は作品に出てくるお料理の作り方を書き出すノートを作ってしまいましたが、レシピ集がもし出版されたらいいなあと夢見ています。
カガミさんと桜川くんのその後も気になりますので!

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